Research group
膵・消化吸収研究班

消化吸収研究班

 学内スタッフは、保田准教授、十亀講師、三宅助教です。急性膵炎、慢性膵炎、膵がんをはじめとする様々な膵腫瘍などの膵疾患を中心に診療しています。また、通常の体外式超音波に加え、超音波内視鏡(EUS)を駆使した診断・治療手技や造影超音波にも取り組んでいます。

急性膵炎

 急性膵炎の主な症状は上腹部痛ですが、これは急性膵炎だけでなく、胃潰瘍や胆嚢炎でも認められる症状のため、その診断には、血液や尿検査が必須となります。急性膵炎と診断されれば、血液検査だけでなくCT検査もあわせて重症度判定を行い、重症例では約1割の患者さんが死亡すると報告されています。また、その予後は多くの場合、発症後48時間以内の病態によって決定されるため、初期診療が重要となります。初期診療では、十分な尿量が確保できるよう、必要十分な輸液を行うと同時に、重症度判定と成因検索を進めなければなりません。重症と判定された場合や胆石性と診断された場合は、当院のような高次医療機関への転送が検討されます。
 胆石性と診断された場合は、CTもしくはEUS検査で、胆管炎・胆道通過障害を評価し、あれば、緊急内視鏡治療を行います。
 重症度の判定のためには、造影CT検査で膵造影不良域の評価を行います。症例により、動注療法を検討いたします。さらに消化管粘膜萎縮に伴うBacterial Translocationを予防する目的での早期経腸栄養や腎障害に対する持続的血液ろ過透析(CHDF)など、集学的治療を行うことで救命率向上を目指しています。
 急性膵炎に伴い膵周囲に液貯留が見られ、多くの場合は自然と吸収され消失しますが、重症の場合は、膵および周囲脂肪組織の壊死を伴い、被包化され数週間たっても消失しないことがあります。この被包化壊死(WON)が増大し症状を伴う場合や感染を伴った場合は、致死的となる恐れがあり、治療介入が必要となります。10年以上前は、外科的に開放し壊死物質を除去しておりましたが、最近では、EUS下に胃などからWONを穿刺、さらに穿刺部位を拡張して、WON内にたまった壊死物質を内視鏡で取り出す治療にも取り組んでおり、より低侵襲に治療することが可能となっています。WONが広範囲に広がった場合には、針ナビゲーション超音波を用いて穿刺し、体外へ壊死物質を排出する治療を加える場合があります。

慢性膵炎

 慢性膵炎は様々な原因によって、膵内部の線維化および実質の脱落が徐々に進行する病気で、一旦発症すると治癒することはなく、食べ物の消化吸収不良や糖尿病などの症状と一生つきあっていかねばなりません。そのため、なるべく早く診断して、その原因を取り除き、進行をくい止めることが重要です。2009年に改訂された慢性膵炎診断基準では、EUS所見を中心に診断する早期慢性膵炎の疾患概念が取り入れられ、慢性膵炎の早期診断による進行阻止が期待されています。しかしながら、早期慢性膵炎と診断されても、慢性膵炎へ進行することはまれで、さらなる絞り込みが必要と考えられています。当院では、反復する上腹部痛発作および血中または尿中膵酵素値異常の患者さんに対してEUS検査による精査を積極的に行っています。また、膵石による膵管通過障害をきたし、有症状の慢性膵炎の場合は、内視鏡的膵管ステント留置術や採石術、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)による治療を行っています。
 現在、慢性膵炎診療ガイドライン第3版発刊(2020年9月予定)準備が進んでおり、われわれも改定作業の一部を担当しております。

自己免疫性膵炎(AIP)

 AIPは、わが国の指定難病300番に指定されているIgG4関連疾患のひとつです(http://www.nanbyou.or.jp/entry/4505)。AIP患者は全国に1万人以上と想定されており、近年増加傾向です。免疫異常やアレルギーの関与が想定されていて、血中IgG4高値に加えて、膵臓にリンパ球とIgG4陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化がおこります。ステロイド治療が第1選択で有効性も高いのですが,ときに膵臓がんや胆管がんと間違われて、外科手術を受ける場合がありますので、AIPの診断は極めて重要です。
 多くの場合、超音波内視鏡下穿刺生検(EUS-FNA)を行いAIPの病理学的診断を得ることが必要になります。AIPは膵臓単独病変である場合もありますが、むしろ病変が複数臓器に及ぶ場合が少なくありません。IgG4関連疾患の罹患臓器としては膵臓のみならず、胆管、涙腺・唾液腺、中枢神経系、甲状腺、肺、肝臓、消化管、腎臓、前立腺、後腹膜、動脈、リンパ節、皮膚、乳腺などが知られています。このため、厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)『IgG4関連疾患の診断基準ならびに治療指針の確立を目指す研究班』では、①消化器分科会、②ミクリッツ病分科会、③眼疾患分科会、④呼吸器疾患分科会、⑤循環器疾患分科会、⑥腎臓病分科会、⑦内分泌・神経疾患分科会、⑧リンパ節・病理分科会の8つの分科会が設定されています。AIPを管理する場合は、他科との緊密な連携をとりながら診療を行っております。

膵臓がん

 膵臓がんは難治がんとして知られていますが、その理由は、早期発見が困難であること、例え早期発見できても、完治が期待される治療法が外科的切除のみで侵襲が大きいこと、進行して発見された場合、抗がん剤による化学療法や放射線治療の効果は乏しく、5年生存がほとんど期待できないところにあります。しかしながらここ数年の間に、新しい抗がん剤が膵がんへの適応を承認されたり、ある種の遺伝子異常あれば免疫チェックポイント阻害剤の適応が承認されたり、陽子線・重粒子線治療が先進医療として認められたりと、治療法の選択肢が広がりつつあります。膵がんのほとんどが超音波やCTなどの画像所見のみで診断可能ですが、当院では、抗がん剤による化学療法や放射線治療開始前には、原則、腫瘍細胞を採取し、病理学的診断を行うように努めています。希ではありますが、化学療法や放射線治療が著効し、切除してもどこに腫瘍があるのか分からないことがあります。その場合、治療が効いて分からなくなったのか、初めからがんではなかったのか、判断に迷うことが起こりえるからです。また、先に述べた免疫チェックポイント阻害剤が使用できるかどうかの遺伝子検査のためにも、EUS-FNAを行い、十分量の検体を確保するよう心がけております。さらに、他の遺伝子異常や蛋白発現を検討することで、治療の効果予測や予後予測ができないか、過去のEUS-FNA検体を用いて検討しております。
 また、膵の嚢胞性腫瘍の一つである膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)では、嚢胞性腫瘍ががん化したり、嚢胞性腫瘍とは別の部位にがんを合併しやすいことが知られており、EUSおよびMRIでの定期的な経過観察を推奨しております。

膵神経内分泌腫瘍

 膵神経内分泌腫瘍は、膵腫瘍の2~4%を占めるまれな腫瘍で、神経内分泌系細胞への分化を有することが特徴です。最近の研究では、膵臓がんとは異なる遺伝子異常を伴うことが報告され、薬剤の有効性や予後が異なることから、治療前の鑑別診断が重要となります。画像診断の発達およびEUS-FNAによる病理学的診断の進歩に伴い、1㎝以下の小さな腫瘍でも診断可能となったためか罹患数は増加傾向にあり、わが国では、患者悉皆登録研究が進行中で、当科も登録に参加しております。抗腫瘍薬が有効なことが多く、外科的切除や動脈塞栓術などと併せて集学的に治療しております。まれに遺伝的な素因を背景にした場合があることから、遺伝相談室と連携しながら診療にあたっています。

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