Research group
消化管研究班/消化器がん薬物療法

 日本において、毎年100万人が「がん」と診断され、年間37万人以上の方が「がん」で命を落とされています。そのなかでも消化器系の「がん」は最も多く、男女とも「がん」死亡の約半数は消化器系の「がん」が原因となっています。消化器内科では、食道がん・胃がん・大腸がん・肝臓がん・膵臓がん・胆道がんなどすべての消化器がんの治療を行っています。
 がん治療においては、長い間、「手術」「化学療法(抗がん剤治療)」「放射線療法」が3大治療として君臨してきました。最近では、それらの3大治療に「免疫療法」が加わり、「がん」の4大治療と呼ばれるようになっています。
 がん薬物療法(抗がん剤+分子標的治療薬+免疫療法)においては、がんの増殖に関わるがん細胞が持つ分子を標的とした分子標的治療薬が2000年代から数多く開発され消化器がんにおいても広く使われるようになりました。従来の抗がん剤と分子標的治療薬を上手く使用することで、多くのがんで治療成績の向上がみられています。
 また、最近開発が進む新規のがん免疫療法は、進行がんに対する治療概念を大きく変えました。ノーベル賞受賞につながった免疫チェックポイント阻害剤は消化器領域では胃がん治療に用いられ、効果を認める患者さんでは、これまでの抗がん剤では経験しなかったような長期的な効果を発揮しています。免疫チェックポイント阻害剤は消化器がん領域においても、さらに適応疾患が拡がる見込みです。
 さらに、2019年6月から「がんゲノム医療」が保険承認され、患者さんのがん細胞を分析して、100種類以上の遺伝子変異を一挙に調べて効果が期待できる適切な薬を選択できるようになりました。見つかった遺伝子異常に対応する薬がすべての患者さんに投与できるようになるまでには、もう少し時間がかかりますが、今後、「がん」に対する薬物療法は、各々の「がん」の特徴や患者さんの免疫状態などを把握した上で、個々の患者さんに適した治療法を選択する「個別化医療」の時代となっていくことが予想されます。
 当科におけるがん薬物療法は、専門的ながん薬物療法の知識と技術を持った「がん薬物療法専門医(日本臨床腫瘍学会)」や「がん治療認定医(日本がん治療認定医機構)」を中心としたカンファレンスで治療方針を検討し、個々の患者さんに適した治療法を選択しています。
 さらに、手術や放射線治療が適応となる場合には、消化器内科医・消化器外科医・放射線科医・がん専門薬剤師・看護師など多職種が出席する「消化器キャンサーボード」において治療方針を検討し、その結果を患者さんに説明しています。
 がん薬物療法においては、治療中の患者さんの「生活の質(QOL)」を維持するために、副作用対策(支持療法)をしっかり行うことも重要です。当院ではがん薬物療法の内容を全般的に管理しており、支持療法においてもガイドラインに沿った適切な対策が行われるようになっています。
 研究・教育機関である大学附属病院としての特性から、新たな治療法開発のための臨床試験、治験も数多く行っています。それらの成果を国内外で発表し(参考論文)、日々の診療に還元するよう努めること、また、若手のがん薬物療法専門医を育成することも大学附属病院にある当科の重要な役割と考えます。
 2019年5月より「永守記念最先端がん治療研究センター」において京都初の陽子線治療センターが稼働しており、消化器がんにおいても陽子線治療ならびに陽子線治療と抗がん剤治療の併用療法などがすでに行われています。また、当院においては「ハイパーサーミア」の機器も保有しており、これら様々ながん治療法を駆使した「がん集学的治療」を実践しています。
 がん治療にあたっては、常に患者さんを中心に捉え、患者さんおよび家族が抱える様々な問題に対して、医師・看護師・薬剤師・ケースワーカーなど多職種のスタッフが協働し、対応するチーム医療を実践しています。治療面だけでなく、生活面や心の問題にも支援できるような質の高いがん診療を目指し、治療を受ける患者さんおよびその家族が安心し、高い満足度が得られるような医療を提供できるよう努めて参ります。
治療法・診断法の開発に関わる主要論文
  • Ishikawa T, Okayama T, Sakamoto N, Ideno M, Oka K, Enoki T, Mineno J, Yoshida N, Katada K, Kamada K, Uchiyama K, Handa O, Takagi T, Konishi H, Kokura S, Uno K, Naito Y, Itoh Y. Phase I clinical trial of adoptive transfer of expanded natural killer cells in combination with IgG1 antibody in patients with gastric or colorectal cancer. Int J Cancer. 2018 Jun 15;142(12):2599-260
  • Nishida S, Ishikawa T, Egawa S, Koido S, Yanagimoto H, Ishii J, Kanno Y, Kokura S, Yasuda H, Oba MS, Sato M, Morimoto S, Fujiki F, Eguchi H, Nagano H, Kumanogoh A, Unno M, Kon M, Shimada H, Ito K, Homma S, Oka Y, Morita S, Sugiyama H. Combination Gemcitabine and WT1 Peptide Vaccination Improves Progression-Free Survival in Advanced Pancreatic Ductal Adenocarcinoma: A Phase II Randomized Study. Cancer Immunol Res. 2018 Jan 22.
  • Ishikawa T, Yasuda T, Doi T, Okayama T, Sakamoto N, Gen Y, Dohi O, Yoshida N, Kamada K, Uchiyama K, Handa O, Takagi T, Konishi H, Yagi N, Kokura S, Naito Y, Itoh Y. The amino-acid-rich elemental diet Elental® preserves lean body mass during chemo- or chemoradiotherapy for esophageal cancer. Oncol Rep 36(2): 1093-1100, 2016.
  • Sakamoto N, Ishikawa T, Kokura S, Okayama T, Oka K, Ideno M, Sakai F, Kato A, Tanabe M, Enoki T, Mineno J, Naito Y, Itoh Y, Yoshikawa T. Phase I clinical trial of autologous NK cell therapy using novel expansion method in patients with advanced digestive cancer. J Transl Med. 2015 Aug 25;13(1):277
  • Kageyama S, Ikeda H, Miyahara Y, Imai N, Ishihara M, Saito K, Sugino S, Ueda S, Ishikawa T, Kokura S, Naota H, Ohishi K, Shiraishi T, Inoue N, Tanabe M, Kidokoro T, Yoshioka H, Tomura D, Nukaya I, Mineno J, Takesako K, Katayama N, Shiku H. Adoptive Transfer of MAGE-A4 T-cell Receptor Gene-Transduced Lymphocytes in Patients with Recurrent Esophageal Cancer. Clin Cancer Res. 2015 May 15;21(10):2268-77
  • Ishikawa T, Kokura S, Enoki T, Sakamoto N, Okayama T, Ideno M, Mineno J, Uno K, Yoshida N, Kamada K, Katada K, Uchiyama K, Handa O, Takagi T, Konishi H, Yagi N, Naito Y, Itoh Y, Yoshikawa T. Phase I Clinical Trial of Fibronectin CH296-Stimulated T Cell Therapy in Patients with Advanced Cancer. PLoS One. 2014 Jan 31;9(1):e83786
  • Ishikawa T, Kokura S, Sakamoto N, Okayama T, Endo M, Tsuchiya R, Okajima M, Matsuyama T, Adachi S, Kamada K, Katada K, Uchiyama K, Handa O, Takagi T, Yagi N, Ando T, Uno K, Naito Y, Yoshikawa T. Whole blood interferon-γ levels predict the therapeutic effects of adoptive T-cell therapy in patients with advanced pancreatic cancer. Int J Cancer. 2013 Sep 1;133(5):1119-25.
  • Ishikawa T, Kokura S, Sakamoto N, Ando T, Imamoto E, Hattori T, Oyamada H, Yoshinami N, Sakamoto M, Kitagawa K, Okumura Y, Yoshida N, Kamada K, Katada K, Uchiyama K, Handa O, Takagi T, Yasuda H, Sakagami J, Konishi H, Yagi N, Naito Y, Yoshikawa T. Phase II trial of combined regional hyperthermia and gemcitabine for locally advanced or metastatic pancreatic cancer. Int J Hyperthermia. 2012;28(7):597-604

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